今更だが、東京都青少年健全育成条例改正問題について考えてみたことといくつかの疑問点
1.規制の目的、根拠
そもそもこの二次元表現規制の目的は社会的法益(青少年健全育成)と個人的法益(現実の児童の保護)のどちらにあるのだろうか?
規制推進派は社会的法益(青少年健全育成)と個人法益(現実の児童の保護)をたくみに使い分けて、両面から規制しようとしている。最終的には国会での児童ポルノ法改正(二次元規制)が目標か?
2.規制の対象
※「非実在青少年」に係る表現規制の問題点についてはたくさんのサイトで解説されているので省略する。
改正条例では商業で販売される書籍で性表現のあるもののほとんどは「成年向け図書類」(改正条例第8条で規定される本)の表示がされると思われる。
そもそも現状でもそうした本(所謂エロ漫画)は成年向け表示がされているではないだろうか? であれば現行条例でも十分規制可能ということになる。
また現条例でも、わいせつ表現・残虐描写・自殺若しくは犯罪を誘発する表現などは規制対象とされている。わいせつ表現についても刑法175条より適用範囲が広い。
都から条文解釈の質問回答集が出されているが、今の条文を読む限り、都の回答集での説明と条文は乖離している。条文にないもの(質問回答集)で過度な規制とならないことを説明されてもあくまで法律は条文が全てであり、法律論的には無意味である。
規制に賛成する人がどのような対象を規制すべしとしているかは、自分の目にした範囲では、そもそも表現自体(ペド表現・残酷描写)が問題なのか、陳列・販売・インターネットへの掲載等の手法を問題にしているのか様々に思える。中には既に現行条例でも規制対象となっているものもあってあまり規制内容が理解されていない印象だ。
3.都条例で個人的に気になる点
①判断基準の作成が行政機関に委ねられている
改正条例の不健全図書類・表示図書類に該当する基準は具体的には東京都規則で定められるため、行政の恣意的な運用がされる恐れがある。不健全図書に該当するかの審査は審議会と下部小委員会にてなされることになっているが、その基準自体を定めるのはあくまで行政機関である。
(以下、改正条例案条文の抜粋)
(青少年の性に関する保護者等の責務)
第十八条の三
保護者及び青少年の育成にかかわる者は、(中略)青少年が男女の性の特性に配慮し、安易な性行動により、自己及び他人の尊厳を傷つけ、若しくは心身の健康を損ね、調和の取れた人間形成が阻害され、又は自ら対処できない責任を負うことのないよう、慎重な行動をとることを促すため、青少年に対する啓発及び教育に努めるとともに、これらに反する社会的風潮を改めるように努めなければならない。
(児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた都の責務)
第十八条の六の二
2 都は、青少年性的視覚描写物(中略)をまん延させることにより青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでないことについて事業者及び都民の理解を深めるための気運の醸成に努めるとともに、事業者及び都民と連携し、青少年性的視覚描写物を青少年が容易に閲覧又は観覧することのないように、そのまん延を抑止するための環境の整備に努める責務を有する。
(中略)
4 都は、事業者及び都民による児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延の抑止に向けた活動に対し、支援及び協力を行うように努めるものとする。
(児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向けた都民等の責務)
第十八条の六の四
何人も、児童ポルノをみだりに所持しない責務を有する。
2 都民は、都が実施する児童ポルノの根絶に関する施策に協力するように努めるものとする。
3 都民は、青少年をみだりに性的対象として扱う風潮を助長すべきでないことについて理解を深め、青少年性的視 覚描写物が青少年の性に関する健全な判断能力の形成を阻害するおそれがあることに留意し、青少年が容易にこれを閲覧又は観覧することのないように努めるものとする。
(引用終了)
②意味・目的不明な保護者・都民の責務規定の存在
上記の条文の規定により、具体的にどのような事態が発生するのか現時点では想像できないが、「児童ポルノの根絶及び青少年性的視覚描写物のまん延抑止に向け」都は「気運の醸成」と「環境の整備」に努め、保護者と都民は協力する責務があるようである。
また、都は「まん延の抑止に向けた活動に対し、支援及び協力を行う」となっているから、啓発活動及び規制推進団体の設立・財政的支援といったことも行われるのかもしれない。
4.アマチュア活動(同人誌即売会)に対する影響
この点においては同人誌即売会イベントの主催者らで構成する「全国同人誌即売会連絡会の同人連絡会」は表現への萎縮を主張している。
その他の影響として自分は下記が考えられると思う(解釈に誤りがあれば指摘していただきたい)
①即売会場での成年向け区画の徹底が義務化される、それに伴い大規模即売会では実質的に入場者が青少年に該当するかの年齢確認、青少年の入場制限は不可能なため、都内での大規模即売会開催が困難になるのではないか。
②成年向け同人誌・同人ソフトの頒布の可能性のある即売会は開催規模を問わず、青少年への成人向け同人誌の頒布の恐れがあるため、そもそも都内の会場が借りられなくなる恐れがあるのではないか。
③即売会場への警察官の立ち入り・調査、警察官への資料提出義務。
④アマチュア活動は規制対象とならないと説明されているが、大手サークル(大部数の同人誌・同人ソフトを定期的・継続的に頒布するサークル)が商業と同様の規制対象にならないか。
また、某大規模即売会主催側関係者から聞いた話。
・「現時点では規制推進側が『非実在青少年』というわかりやすい用語を使ってくれたので、反対運動が盛り上がっているが、オタクは冷めやすいので今後の規制反対活動継続が心配」
・「仮に今回改正案が廃案になっても、石原都知事の姿勢とは別に規制推進団体は存在するので、来年都知事が交替してもまた別の規制条例が出てくる可能性が高い」
・「規制推進派は漫画の審査機関を作りたがっている。関係行政機関の天下り団体としての側面もある」
5.最後に
現状としては、6月都議会で改正条例が成立しなくても、数年以内には確実に同種の規制条例が成立する予感がする。自民・公明及び規制推進団体の側の方が組織的かつ継続的に規制成立(条例改正)を目指して活動を続けられるからだ。このままでは規制反対派は、ある程度の条件で改正案の修正に応じて妥協するしかないのではとも思えてくる。
今後は規制推進派は、都の改正条例成立を橋頭堡として、国会での児童ポルノ法改正(二次元規制)→全国道府県への規制波及 を目指してくるのではないだろうか。
まあ、規制する側・反対する側、どちらも多数の一般市民には実際には何の益も無いことにエネルギーを使って、傍から見ている側も疲れる景気の悪い話ではある。
by kimuchigirai
改正条例案についての疑問点